1.弱い者イジメをする者は弱い。
ハラスメントは、労務管理のなかでは社内等での「イジメ」や「嫌がらせ」の意味に使われています。
子供の頃、亡くなった祖母が
「弱い者イジメをするのは、その人が弱い証拠なんだよ」と話していたのを思い出します。
それを聞いたとき、子供の頭では(腕力や多数派形成能力などで)
「弱い者イジメをすることができる者は、相対的に弱い者よりは強いのではないか?」と思いましたが、そうではありませんでした。
弱い者イジメをする者は、絶対的に弱いのです。
何に対してか?環境や状況や課題や自己に対してです
例えば、Aが自分を追い上げてくるBを、必要性を超え事実に相違して、明らかにイジメている場合、それは鍛えているのではなく(たいてい本人はそう言いますが)、Aは無意識にBを恐れて、自分に自信がなくなっていることを自白しているのです。
本当に強い者であるならば、弱い者にその「強さ」を付与(エンパワーメント)できる者でありましょう。
社内でハラスメント問題が発生しているということは、弱い者同士が組織をさらに弱体化させているということです。

2.労務管理リスクのNO1
前述のように、ひと頃まで「イジメ」と言えば、子供の話でありました。
新聞やテレビで、「イジメが・・・まさかウチの学校で」と絶句し、司会者やコメンテーターや「世間」の(それこそがイジメであるような)総攻撃に晒される校長先生等の姿は、しかし、もう対岸の火事とは言えません。今、企業では経営者の責任が問われます。

平成29年度の厚生労働省「個別労働紛争解決制度の執行状況」を見ると、民事上の個別労働紛争相談件数は253,005件、内容は「イジメ・嫌がらせ」が72,067件(28.5%)と6年連続のトップになっています(「解雇(10.9%)」や「労働条件の引き下げ(8.5%)」より多い)。
ちなみに15年前の平成14年の「イジメ・嫌がらせ」は、5.8%でした。
特にセクシュアルハラスメントとパワーハラスメント、そしてマタニティハラスメントは、それ自体で損害賠償や慰謝料の対象になるなど、本人同士だけではなく、会社の大きなリスクになります。

平成23年の厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準」のなかの「業務による心理的負荷評価表」には、この「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」「(継続的な)セクシュアルハラスメントを受けた等」は強度Ⅲ「強」とされ、
① 認定基準の対象となる精神障害を発病していて
② 発病前6か月の間にこの評価が「強」であり(「中」程度でも、他に「長時間労働」「ノルマ未達成」など組み合わされて「強」とされることがあります)
③ 業務以外の心理的負荷や個体的側要因により発病したとは認められなければ
労基署に「業務上災害である」と認定されることになります。

私傷病としても十二分に悩ましい「メンタルヘルス不調問題」が労基署に「業務上災害」と認定され、それがさらに民事上の争いにでもなったら大変な事態です。
もともと不調であったとしても「会社が増悪させた」とされることがあります。
ハラスメント+メンタルは、「合わせ技一本!(負け)」の危険があります。

3.事前対策が必要
さて、故意に「人が嫌がることをするのが大好き」である人、「人に嫌われる、性格の悪い人でありたい」と望む人は、そう多くはいないと思います。
たまにいたとしても、因果応報、あまり良いことにはならないでしょう。
「嫌がらせ」とは、相手が「嫌がる」ことをすることなので、「嫌がらせした」とされる本人の「そんなつもりはなかった」等の善意・好意など、頭の中の「思い」と同じことではありません。そこが怖いところです。
しかし(良くある話しですが・・・)「被害者」であるという人から
「私はあなたが嫌だから、側にいられるだけで私はあなたに嫌がらせを受けているのである」というほどの「嫌がらせ」は他にないでしょう。
それに悩んでメンタルになる「加害者」とされる人がいます。

そんな・・・・会社の内側で「嫌がらせ合い」をしているヒマがあったら、外側に目を向けて「顧客に好かれることに専念しろ!」と言いたいところですが、そのためにも、また使用者責任を問われるようなリスクを回避するためにも、ハラスメント対策は、コトが起こる前に講じておかなければなりません。

阿世賀 陽一