今は昔、ベースアップ(個々の定昇ではなく、賃金表を書き換えるなどして全体を上げること)は当たり前、さらに言えば経済成長と相互作用を果たしてきた時代がありました。
以下のフィクション、時代設定は80年代後半、バブルの頃です。
ある会社の春闘団体交渉での経営者と企業内労働組合との会話。
常務「今ここに一定の原資があるとする。組合に問う。これを・・・賃上げに使うか?投資に使うか?」
組合「もちろん、ベースアップです!」
常務「そうか?オレは知っているぞ。組合員が、いや社員が、今本当に求めているものは、競争に勝てる投資だということを ・・・」
組合「(ギョ!)しかし ・・・ 現在当社の賃金水準は業界にあって低位にあります。さらに他社が大幅ベアを実施して、この差が広がれば組合員は ・・・。少しぐらい装備を良くしても、やる気のない兵隊で、戦争に勝てるでしょうか?」
社長「(うーむ!・・・・)」
その年は、思いの外、大幅に賃金が上がりました。

支部に帰った中央執行委員は組合支部幹部に歓待されます。
支部「よくやった!中執!」
中執「社長は最後に『頑張ってくれよ』と仰っていたな ・・・・」
支部「もちろんだとも!頑張ろう!」
そして、1カ月後の支部役員会 ・・・
支部「会社はもっと設備や商品開発に投資しなければダメさ。執行部はそのような提言活動をもっと強化すべだ」
中執「(うーむ ・・・)」
さて ・・・ 労使どちらが正しかったか、誤っていたか。
この「フィクション」は今とは時代設定が違いますので何とも言えません。しかし、経営者と労働者が知恵を絞り、汗を流して稼いだお金です。しかも、社長が進退をかけて上げた賃金 ・・・
「ベースアップ 三日も経てば 既得権」(字余り)

入ってくるお金にはノウハウという付加価値がついているのと同じように、出すお金には社員全体と個々人に対して、納得性やモチベーションという付加価値を充分につけて活き金にしなくてはなりません。

阿世賀 陽一