1.問題社員とは何か?
顧問先さまからのご相談で多いのは、メンタルヘルス問題や労働時間など労働基準法等にかかることもさりながら、やはり問題社員の問題です。
問題社員は、いつの時代にもあるものと思われます。聖書の記述では人類最初の一人目から問題を起こしてクビになっています。
問題社員とは何か?それは、常識(コモンセンス)を外れて、「やるべきことをやらない」「やってはいけないことをやってしまう」ことに尽きるでしょう。
「そんなこと ・・・ 常識ではないか!」
「彼は常識がわからないのだろうか?」
常識がわかっていれば、問題なんか起こしません。
また人間、誰しも煩悩を具有し「わかっちゃいるけど!やめられない ・・・」ものです。
人間が住む社会のモノゴトは、明らかにはじめから「白黒がついている」ことは少ないものです(裁判は「白黒をつける」のです)。
そして人間、自分の尺度でモノを考えコトを起こしがちなので、しだいにその頭の中は、「これくらい良いだろう」がグレーから黒い方にズレていくこともあります。

2.問題とは何か?
問題社員の問題の対応以前に、何が「やるべきこと」で、何を「やってはいけない」のか、「問題とは何か」を会社として社員に示しているか?ということが、対応するときにも重要なことになってきます。
労働契約である以上、社員は会社に「労務を提供する義務」があります。その労務提供は企業においては組織で協働しておこなうものなので、それに付随して社員には「企業秩序を遵守する義務」があります。
就業規則は、社員に労務を提供してもらうために「1日の所定労働時間○時間」というような労働条件の共通基準を示すとともに、社員に企業秩序を遵守させるために、服務規律(労務を提供する際のルール)を規定するものです。
そこには「各人が健康に留意して元気に働くこと(これは会社の健康配慮義務や昨今のメンタル不調問題などから考えると究極のメッセージです)」というような訓示的な服務規律の章の遵守事項だけでなく、入退場や遅刻・欠勤の際の手続きなど、さまざまルールが規定されています。それが広い意味で服務規律です。
そして、それを放置しておけば企業秩序を維持できないような「やってはいけないこと」を示しているものが懲戒規定です。
罰することやクビにすることが目的ではなく、社員がそれに値する問題を起こさないように、あらかじめ「白黒を示しておく」のです。

そして問題社員の問題が大きくならないうちに、そして繰り返さないように、注意をしたり、戒告処分などの規定を実行することは、企業秩序を維持していく会社の責務です。
それは問題を最終的に解決するための労務管理の要でもあります。

3.死の掟
昔、巨匠白戸三平の忍者マンガに『ワタリ』という作品がありました。
2つの勢力が争う伊賀の里には「死の掟」という規範があり、その「掟」に触れたものは、死をもって報いられます。
しかしその「掟」が怖いのは、その重罰主義にあるのではなく、その「掟」が何であるのかを「・・・・ 誰も知らない」ということにあります。つまり遵守しようもなく殺されていく。
実は、2つの勢力の影の首領(インフォーマル・リーダー)は同一人物で、争いはその人物の支配のためだけにやらされていた。
「掟」とは、その真実を知ってはいけないということであった!

そんな ・・・・ 理不尽な、非生産的な、組織の目的からはずれた、管理が自己目的化したことをやっているなか、伊賀の里は支配を継続するために影の首領が呼び込んだ外敵(織田信長)のために、みんな滅んでしまう・・・・という救われない話でした。
それはまさに「組織の死の掟」でした。

就業規則の服務規律や懲戒規定は、通り一遍のものではなく、会社の目的と合理的な価値感を反映させた、生きたものでなくてはなりません。それを社員に示しておくのです。

阿世賀 陽一