1.成果責任-成果主義の主柱
アカンタビリティーとは一般的には「説明責任」ということです。
国会などで「大臣は説明責任を果たしていない」などと使われています。
私が最初にこの言葉-アカンタビリティーを知ったのは、人事賃金用語としてで「成果責任」と訳されていました。
バブル崩壊後の失われた10年ないし20年の間に流行した「成果主義」。
その実態はほとんど「結果主義」であったなか、ほんとうのアメリカ的人事賃金制度で、アカンタビリティーはコンピテンシー(行動能力)と並ぶ2本の主柱です。
英語の辞書をひくと意味はレスポンシビリティー(responsibility)と同じ「責任」ですが、レスポンシビリティーが入口的に「責任感」的な意味合いが強いのに対して、アカンタビリティーは出口的に、ものごとの実施・達成についての「逃れようのない責任」そのものと説明されていました。
その時、私は古代から「契約」という厳しい概念に慣れている、実に西欧的な言葉と感心しました。
「良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ~良い実を結ばない木はみな、切り倒されて火に投げ込まれる(マタイ傳第7章)」。
天国か地獄か。
日本にも地獄はありますが、ときおり蜘蛛の糸が降りてきます。
地獄に仏。
アカンタビリティーが、一般的な外来語として、かつ「説明責任」という意味で使われてはじめたとき、私は「成果責任」という日本語をそれと並べてみて、実務の経験から「なるほど・・・」と、とても納得したものです。
2つの訳語を総合統一すると、次のようなことになります。
「イイワケしちゃ・・・・アカン!タビリティー・・・・」

2.MBO物語-期初面接篇
(社長)「君の部の本年度の売上目標は、昨年対比150%でVターン!」
(部長)「はい!必ず やります!」
(部長、悲哀の後ろ姿で退室・・・・)
(A)「社長、彼、そんなに売ると思いますか?」
(社長)「いえ。全く思いませんが、150%!とハッパをかけておけば、110%くらいは、売
るんじゃないか と思って・・・・」
(A)「彼はあの後ろ姿からして、もう1年後の『言い訳』を考えているじゃないかなぁ」
社内で、部下に対し「足して2で割る」交渉のような、数字だけの吹っ掛けはやめましょう。部下の頭の中は無用なストレス、または、もう今から期末に向けて「売れなかった言い訳」でいっぱいになっているかもしれません。
目標を達成するためには、それ以上の努力が必要です。しかし、どうせ部下の頭の中をいっぱいにするなら、その努力の中身(実現可能な達成方法と過程)を考え抜かせて、計画させて、引き出して、確認すべきです。
達成すべき目標には、根拠と確信が必要です。

2.曖昧言葉

成果責任とは、良い結果でも悪い結果でも、後で(中間でも、常にでも)、言い訳でなく、過去の事実を未来に向かって、説明できるものでなくてはなりません。

説明を逃れようとするところに成果はありません。

会社や組織の営業計画、事業計画、あるいは個々の「MBO文章」の末尾ごとに、次のような曖昧言葉はありませんか?

<抽象的表現の例>

・図る・検討する・活性化する・向上させる・推進する・整備する・充実する・効率化する・徹底する・強化する・管理する・定着させる・レベルアップを行う・多様化する・明確化する・極大化する・極小化する・削減する・合理化する・適切に~
・~直ちに~ではない・必ずしも~とは言えない

<心得的表現の例>

・努める・積極的に行う・責任をもつ・一生懸命取り組む・目指す・期す・心掛ける

このような曖昧言葉は、何ものをも指し示していません。ただ、それを発する者の、行動する前から言い訳を準備する心象を表現しているだけの言葉。仕事を、組織を、本人達の人間の可能性をも覆う言葉です。
そして、業績報告にも末尾ごとに、次のような言葉はないでしょうか?
「~を図った」「~検討した」「~活性化させた」「~向上させた」 以下同様。

3.MBO物語-期末面接篇
『目標である1億円に向けて販売体制を強化し、積極的に売上の向上に努め、その推進を図る』
上司「~という君の期初計画の結果についてだが・・・」
部下「はい。販売体制を強化し、積極的に売上の向上に努め、その推進を図りました」
上司「しかし、残念だが1億円はいかなかった・・・」
部下「向けて、向上はしたでしょ。少しは・・・」
上司「『図る』って、何をしたのかね」
部下「文字通り『いろいろ』やってみました」
上司「体制を強化するって・・・」
部下「頑張ったでしょ。休日出勤もしたし・・・」
上司「君、もう少し建設的な話をしようじゃないか。事実、予算いかなかったから、赤字なのだよ」
部下「こんな不況のなかで、もともと『1億円売ります』なんて、約束していません」

4.どうすべきであったか
「販売目標 1億円」
期日は決まっているのですから、業績目標の言葉については、それだけで充分です。
ただし、その目標を設定するに至る根拠と達成するための計画は、社員と上司が、そして経営が納得して信頼できる、すなわち、説明に耐えうるものでなくてはなりません。
「目標管理シートに○○字以内で記入せよ」
記述試験じゃあるまいし‥・、それで良くなるのは人事部のファイリングだけです。

上からの目標、予算を示すのであれば、「真蟄に」行動すれば達成できる数字や程度です。
評価の評語が一般的なSABCDであれば、それがB評価基準です。
本人がそれを超えてAやSにチャレンジして達成できたら、「堂々と誇りをもって説明しなさい」と言いましょう。そして淡々と評価するのです。未達成でも同じことです。憾み憾まれることなく淡々と。

走り高跳びのバーを前にして、本人にとって初めからバーが高すぎると、人間、足が動かなくなるものです。仕事の場合は、言い訳の余地を考えます。終わった後も言い訳の大合唱。
もちろん、ゆるくして、上(管理職)から下までバーを「みんなで下げれば恐くない」は恐ろしいことです。それで社内円満には決してなりません。なぜなら、どのような事業体でも「相手」がいて、そして「顧客」がいるからです。

計画からは、曖昧言葉は先ず、管理職から断固としてやめさせましょう。
例えば「図る」とは「いろいろやってみる」という意味ですが、トップが「~に向けていろいろやってみろ!」と姿勢や方向性を示すものであるならまだしも、具体的な計画を示して指導する役割である実務責任者が多用していたとしたら、それは給料ドロボーです。

5.結果だけを問うと言い訳になる。プロセスを問うと対策になる。
言い訳して、結果が変わるものではありません。成長するものでもありません。捕って喰うわけでもなし、収容所送りにされるものでもないでしょう。
会社にとって人事とは、社員をCやDに貶めて、人件費を軽減することが目的でしょうか。経費コントロールは大切なことです。しかし人材や賃金とは「経費」ではなく、明日を勝ち抜くための「費用」です。
勝てなかったら「では明日はどうしたら勝てるか」を考えて答えをだす場です。
そして、勝てたときこそ「どうして勝てたのか。そこに明日もまた勝つためのノウハウという宝の山は秘められていないか」と、より厳しく問われるべきです。

6.MBO&セルフコントロール物語-再び期末・期初面接篇
上司「君が今期達成してきたことは、どのようなことだろうか?」
部下「いろいろです」
上司「では例えば、どのようなことがあった?今期最も『やった!』というクリーンヒットとそのプロセス、そして痛恨のアウトとその原因を話してくれないか?」

部下「ある取引先が・・・」
上司「社内で『ある~』はないだろう。それは何時どこで、そこにどれだけのものを見込んでいた?そして、君は…『その時、どのようなことをした?』」

部下「不況ですから…」
上司「不況という環境は私にも会社にもいかんともし難いが、その中で例えば、どのようなチャンスがあるだろうか?」
部下「努力はします。やってみます・・・」
上司「それはどんな努力だろう?私にも上に対して君の努力について実現可能であることを証明する責任がある。その『例えば』を綿密に期間に展開していこう」

曖昧な陳述から事実を引き出してアカンタビリティーを明確にしていくには、「例えば(ケース)それは~」と次のような「ど」のつく言葉で問うていきます。

・どんな時?・どのような場所?・どの人?・どういった人達と?・どんなふうに?・どれくらい?・どんなことがあげられる?・君としては、どう思った?
・(君だったら)どうすべきであっただろう?・それで状況はどのように変わっただろうか?

そのように曖昧状態を排除しながら、具体的に、掘り下げていけば、その過去の期間と未来が見えてきます。
それが「説明責任→成果責任」。
単なるノルマや結果主義ではなく、再現性のある、会社に貢献する、成果実現行動の神髄です。

阿世賀 陽一